映画館|岩波ホール閉館の報に触れ

 この20年でシネコンのスクリーン数は3倍に増え、それ以外では3分の1に減少している。(参照:日本映画製作者連盟)。ここではシネコン以外の映画館の総称としてミニシアターという呼称を使うこととする。

 そもそもシネコンとミニシアターの違いとは何なのか?についてはブログの最後に私自身の勉強のためにもだらだらと書いておいた。

 ミニシアターの先駆け的存在、岩波ホールが54年の歴史に幕を閉じる。閉館はコロナで客足が途絶えたためとも言われるが、施設の老朽化など平時からの環境の変化も大きな要因だったように思う。

 私にとってより身近な所で言うと、京都のミニシアター・京都みなみ会館が岩波ホールと同様に1スクリーンの古い映画館であったが、2018年に一旦閉業。翌年、元の建物は取り壊されたが、約100メートル離れた新たな建物に3スクリーンを有する映画館として復活。その直後、コロナ禍に見舞われるなど、順風満帆でもないだろうが。現在も元気に営業している。

 京都ではこの5年間で2つの新たなミニシアターが開館。繁華街にあるアップリンク京都はコロナ禍中の開業ではあるが、利便性良く、やはりそれなりに客も入っているように思う。しかし2021年にアップリンク渋谷が施設の老朽化とコロナ禍の営業不振を理由に26年の歴史に幕を閉じると、2022年からはアップリンク京都の運営・編成業務を東京テアトルに委託することとなった。

 結局ミニシアターはどこも自転車操業なのだろう。どこかで1館閉館しても、新たに大型商業施設が生まれる度に次々とコピーのように映画館を移植するシネコンと違い、ひと度施設の老朽化やコロナ禍などの山場に直面すればそれで歴史が途絶えてしまう可能性は大きい。経営を受継ぐ人材の確保も課題といえるだろう。

 一方で、シネコンは増えている。むしろサブスクなど家で手軽に映画が見える昨今、過多ではないかと思うほど増えている。それでもアニメ映画を上映すれば多くの客を呼び興行収入はあがる。テナントにシネコンを入れるだけの価値を創出できているのかもしれない。だからといって各駅ごとに大きな映画館を作り、どこでも同じ映画を上映している現状がいつまでも続くだろうか。そしてもし客足が途絶えた場合、作ってしまったシネコンはどうなるのか。

 今はネット配信が隆盛である。コロナも追い風となったが、コロナがなくても大勢に影響はなかったと思う。外資系資本の映画館は日本から撤退したが、ネットビジネスとなれば話が違うだろう。映画館は割を食うことになる。Netflix制作のコンテンツは人気がある。映画館がなければ良い映画を作れないという時代でもないだろう。

 音楽CDは売上げランキングをアイドルが独占した後、名実ともネット配信の時代へと突入した。CDは売上を出しながらも音楽を聴くために使われることは殆ど無かった。握手券を付けるための役割と一部の愛好会の収集用であった。もしも映画館も音楽CDと同じように形骸化してしまったら...、例えば映画館がアニメのタイトルを見るための場所になってしまえばそれは形骸化の第1歩だろう。

 私は映画館が好きであるし、特にミニシアターはそこで上映される映画も、各映画館独特の雰囲気も両方好きだが、ミニシアターの減少は仕方ないことであるとも考えている。文化的な価値があっても、時代が新たに投資する対象とならなければ必然的に絶対数は減るのだ。好きな映画館がその数の中に含まれることも出てこよう。

 ミニシアターは元より減り続けているが、シネコンもどうなることか。案外シネコンの作った映画館の一部が生き残りをかけ独自性を出しはじめ、ミニシアターの代わりを担う未来があるのでは?いや、Netflix制作映画を見るための映画館に置き換わるだけかもしれない。それとも今のまま増え続けるのか。

 残った映画館がミニシアターと呼ばれていようがシネコンと呼ばれていようが、そこまでは譲歩するが、映画のタイトルは今までと同じくらい選択肢があってほしいものだ。

 そもシネコンとミニシアターの違いとは何なのか?便宜上の定義は1館の有するスクリーンの数が5スクリーン以上をシネコン、それ未満をミニシアターと分類しているようだ。実際にはもう少し内容的な違いで呼び分けされるのが一般的なように思う。主観も入ることをご了承していただきその違いをざっくり言えば、シネコンはどの映画館も殆ど同じである所に特徴があり、ミニシアターは映画館によって様々である所に特徴がある。
 シネコンは基本的に映画館独自で映画を選び上映するということがない。大手配給会社のタイトルを受動的に全ての映画館で上映する。つまりシネコンならば日本中でいつ映画館へ行っても同じ映画が見られる。映画に関わる企業が大きな興行収入を得るための仕組みともいえるだろう。大体が独立した建物か大型商業施設内に作られ、施設やサービスも運営会社による違いは殆ど変わりない。せいぜいポップコーンの味付けの違いくらいの差だろう。
 ミニシアターは基本的にシネコンで上映していない映画を上映するという点で統一性があるが、上映時期やタイトルは館によって様々。特に独自性の強いタイトルを選び上映する映画館を「単館系映画館」と呼び、単館系映画館=ミニシアターという定義も存在したようだ。その単館系の先駆けであり代表的存在が岩波ホールである。だから岩波ホールの閉館は文化的損失だという声が挙がったのだろう。ミニシアターの上映するタイトルは多岐に及び、日本で配給される世界中の映画がその対象である。旧作、旧作のデジタル修復版も上映される。特に古いフィルムばかり上映する映画館を「名画座」と呼ぶ。今も残る名画座・新文芸坐は料金は値上げをしながらも昔ながらの入替制なし興行をしている。2月から休業し4月からリニューアルオープンの予定。4K修復版の上映も出来る設備を導入するという。映画館の構造や入っている建物も映画館により様々で、岩波ホールの場合オフィスビル内にある。

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